世界の雨水

REPORT バングラデシュ・スカイウォーター・プロジェクト
より多くの人に安全な水へのアクセスを 実現するために

雨水市民の会会員・(株)天水研究所プロジェクトマネージャー  笹川 みちる

P12-05

朝晩2回、30分ほどかけて池まで水を汲みに行くのが彼女たちの日課

REPORT
バングラデシュ・スカイウォーター・プロジェクト
「JICA協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」
進行中。

雨水市民の会では、2008年から2010年にかけて三井物産環境基金の支援を受け、バングラデシュにおける安全な飲み水の確保*1のための持続可能なスカイウォーター・プロジェクトに取り組んできました。その成果を引き継ぐ形で、2011年からは村瀬理事が設立した(株)天水研究所がJICA(独立行政法人国際協力機構)BOPソーシャルビジネス事業として天水活用プロジェクトをバングラデシュで展開しています。このプロジェクトは、天水活用を持続可能な取り組みにしていくためにソーシャルビジネスの手法を取り入れ、将来的には、天水活用を地域の産業にしていく狙いを持っています。このプロジェクトは、(株)天水研究所と(株)パデコの協働事業ですが、佐藤理事、会員の鎌田氏及び笹川がプロジェクトに参画しています。2011年4月からすでに3回の現地調査を実施し、2011年10月には、私(笹川)も初めて2週間の現地調査に同行しました。

P12-07霎イ譚大・ウ諤ァ

農村の女性たち。安全な水の確保への関心は非常に高い。

世界には年間3,000ドル未満で暮らしている貧困層(BOP:Base of the Pyramid)が約40億人いるといわれています。JICAでは、開発途上国の課題の解決を目指して、BOP層を対象にしたビジネスに取り組む民間企業等を開発パートナーと位置づけ、連携を促進するための準備調査を2010年度からスタートしました。その第1回の調査対象のひとつとして「マイクロクレジットシステムを取り入れた雨水タンクソーシャルビジネス実現可能性調査」が採択され、2011年3月~2013年9月の予定で、調査を行っています。

ローコストタンク「AMAMIZU」の開発

これまで雨水市民の会が現地事務所を開設し、現地NGOと共に開発・普及に取り組んで来たコンクリートリングタンクは、4,400Lで20,000タカ*2(18,500円)という価格で、現地では学校教師や公務員といった中流以上の人々でなければ手が出ないのが現状です。このタンクの価格をおよそ3,000タカ(2,775円)に抑えることをめざして開発されたのが、タイの伝統的雨水タンク「ジャイアントジャー」の技術を応用したモルタル製の一体型タンクです。2011年4月から、2人のバングラデシュの左官工が、タイでの約1ヵ月の技術研修に参加、身につけた技術を活かして650Lと1000Lの2つのサイズのジャーが完成し、「AMAMIZU」と名付けられました。現在は鎌田会員の技術指導のもと、製品としての品質基準作りや製造のスピードアップ、新たな職人の育成にも取り組んでいます。

2011年秋には、プロジェクト実施場所となるクルナ管区バゲラハット郡モレルガンジにAMAMIZU製造工場が開設されました。工場はフェリーの船着き場から徒歩30分程で、町の中心部へ向かう人や乗り物が前を行き交うところで、現地ではすっかり有名になり、大人も子どもも興味津々で製造の様子を見守っています。

P12-01陬ス騾 蟾・蝣エ

バングラデシュ・プロジェクトによるオリジナルの雨水タンク「AMAMIZU」がならぶ製造工場

私は、2011年10月下旬に約2週間の現地調査に参加。初めて訪れた沿岸地域は首都ダッカから車とフェリーでおよそ9時間、田畑や養殖池が並ぶのどかな農村地帯ですが、2007年のサイクロンシドル、2009年のサイクロンアイラによって大きな被害を受けた被災地でもあります。

現地調査では、AMAMIZU製造販売のビジネスモデル構築の決め手となる販売価格と販売システムの決定に向けて、現地マイクロクレジット機関*3へのインタビューや住民へのヒアリングを行いました。

現地スタッフが取り組んでいる戸別インタビューも300件を終え、水問題の実態や雨水利用への関心度が明らかになって来ています。調査の結果、3,000タカという価格設定であれば、今回のターゲットとなるBOP層の約半数が購入可能であることがわかってきました。分割払い等も取り入れれば、購買層はさらに広がると考えられます。

P12-03險ュ鄂ョ

設置された「AMAMIZU」

バングラデシュは5月下旬には雨季に入り、雨水タンクのニーズがいっそう高まります。そのタイミングに合わせて、バングラデシュの政府関連機関や国際援助機関向けの英文パンフレット、タンクの購入者となるBOP層に向けたチラシ制作やワークショップの企画等も進行中です。目標は、2020年までにAMAMIZUを15万基普及させることです(約90万人の飲み水となります)。現在バングラデシュ沿岸地域の人口約3,700万人のうち約2,000万人が安全な飲み水を得ることができないでいると言われています。この目標が達成すれば2,000万人の約5%の人たちが安全な飲み水を確保できることになり、バングラデシュ社会全体に大きなインパクトを与えられると期待されています。

***

*1 安全な飲み水の確保が困難:バングラデシュは飲料水を地下水や池の水に頼っているが、地層のヒ素の影響や塩害化の進行などで、安全な飲み水を得ることが難しいと言われている。
*2 1タカ=0.925円(2012年2月レート)
*3 マイクロクレジット機関:貧困層の女性を対象に、起業の元手となる少額の資金を無担保で融資する機関。

« »